お風呂

介護が必要になった時のお風呂リフォームポイント

介護が必要になった時、お風呂リフォームは“安全と安心”のために欠かせない住まいの見直しポイントになります。
家族の誰かがケガや病気で身体が不自由になったり、高齢の親御さんと同居することになったタイミングで、「お風呂での転倒が心配」「浴槽をまたげない」「一人で入浴させるのが不安」——そんな悩みが一気に現実味を帯びてきます。
実際、私もリフォーム現場で「もっと早くバリアフリーにしておけば良かった」「急な入院や介護で慌てて工事を依頼した」というお客様の声を何度も聞いてきました。

このページでは、\*\*「介護が必要な時のお風呂リフォームで絶対に押さえておきたいポイント」\*\*を、現場経験と一次体験を交えて分かりやすく解説します。
安全に入浴できるためのレイアウトや設備選び、費用の目安、介護保険の活用法、将来を見据えたプランの立て方まで——。
「誰もが安心して使えるお風呂」を目指すための実践的なヒントをお伝えします。

介護リフォームで押さえるべき浴室のポイント

1. 転倒防止のための「バリアフリー床」&安全設計

介護が必要な方にとって、一番多いお風呂の事故は“転倒”。特に浴室と洗面所の段差や、滑りやすい床材が原因で思わぬケガにつながるケースが後を絶ちません。
現場でも「ちょっとした段差でつまずいた」「石けんの泡で足が滑った」といった声をよく聞きます。

おすすめの対策例:

  • 浴室入口の段差をゼロ(段差解消)
  • 滑りにくく、やわらかい床材(TOTOほっカラリ床、LIXILキレイサーモフロア等)
  • クッション性があり、転倒時もけがを軽減できる床材
  • 床暖房付きにすると、冬場のヒートショック予防にも有効

また、床が冷たすぎると身体が縮こまり、バランスを崩しやすくなります。断熱+防滑性のある床材を選ぶのがベストです。

2. 浴槽のまたぎやすさ&安全な出入り

「浴槽をまたぐのが怖い」「深くて出入りが大変」——こんな声が多いのが浴槽です。
私の現場経験でも、浴槽の高さ・またぎやすさで入浴の安全性が大きく変わることを実感しています。

おすすめの浴槽選び:

  • 浴槽の縁(またぎ高さ)は45cm以下が理想(JIS規格参照)
  • 出入り口の近くに縦型・横型の手すりを設置
  • 浅型の“ストレート浴槽”や“ベンチ付き浴槽”で、座ったままでも出入りしやすい
  • 浴槽底にすべり止め加工、浴槽内の手すり追加も効果的

特に、介助する方がいる場合は「二人が同時に入れるスペース」「浴槽側面にしっかり体重をかけられる設計」が役立ちます。

3. 握りやすい「手すり」の配置とバリエーション

「手すりをつけたいけど、どこに・どんな形がいい?」と悩む方も多いもの。
国のガイドラインや現場の一次体験から、最低限おすすめの手すり配置は——

  • 浴室入口(立ち座り補助用/縦手すり)
  • 洗い場から浴槽への移動用(横手すり+L字型手すり)
  • 浴槽内からの立ち上がり補助(浴槽横/短い縦手すり)

壁の下地補強も忘れずに。
手すりの太さやグリップ感は、実際にショールームで握ってみるのが一番。
ご本人と介助者、両方の意見を取り入れてください。

4. 介護に配慮したドア&浴室レイアウト

意外と盲点なのが「ドア」。古い家だと開き戸が多いですが、引き戸や折れ戸への交換で車椅子・歩行器でも使いやすくなります。
また、ドアの幅は65cm以上が理想。
洗い場を広く取り、シャワーチェアや介助スペースを確保すると、介護者にも優しい浴室になります。

現場では「開き戸から引き戸に替えただけで、家族の負担が減った」と感謝されたことも多いです。

5. 入浴動作をラクにする設備&グッズ

  • シャワーの高さをワンタッチで調整できるバー
  • 座ったままでも使いやすいワイドミラー
  • 滑り止めマットやポータブル手すり(工事なしで追加できる安全対策)
  • 緊急呼び出しボタンの設置(高齢者・要介護者の安心につながる)

介護リフォームの費用相場と介護保険活用のポイント

介護リフォームの費用はどれくらい?

介護が必要になったタイミングでの浴室リフォーム、やはり一番気になるのは「どれくらい費用がかかるの?」という点でしょう。
工事内容や設備のグレード、家の構造によって幅はありますが、おおよその相場感は次の通りです。

  • 手すり設置(浴室・洗面所):1カ所1万5,000円〜3万円前後
  • 浴室の段差解消・床材張り替え:8万円〜20万円程度
  • 浴槽交換(またぎ低タイプへ):15万円〜35万円程度
  • ドア交換(開き戸→引き戸・折れ戸):8万円〜18万円程度
  • 全面バリアフリーユニットバスへの交換:60万円〜150万円(工事費込み)

現場でよくあるのは「必要な部分だけピンポイントでリフォームしたい」「できれば一気に全部対応したい」というご希望。
部分リフォームであれば比較的低予算で済みますし、全面的なリフォームでも介護保険や自治体の補助金を使えば自己負担をかなり抑えることも可能です。

介護保険による住宅改修費の活用

介護が必要な場合、介護保険の「住宅改修」制度を利用すれば、対象工事のうち最大20万円までの工事費のうち1〜3割(多くは2万円〜6万円程度)の自己負担で工事ができます

【使い方の流れ】

  1. 市区町村の介護保険窓口やケアマネジャーに相談
  2. 必要な改修内容を現地調査・プランニング
  3. 工事前に「住宅改修理由書」「見積書」などを役所に申請
  4. 申請後に工事開始(事前申請が必須!)
  5. 工事完了後、写真付きで報告・請求
  6. 費用の9割または8割が後日支給される

※住宅改修費は要介護(要支援)認定を受けている方が対象です。
「手すり」「段差解消」「床材変更」「引き戸・折れ戸へのドア交換」などが主な対象となります。

現場でのアドバイス:
介護保険の手続きは最初こそやや面倒に感じるかもしれませんが、ケアマネジャーやリフォーム会社がしっかりサポートしてくれることがほとんどです。
書類作成や写真撮影も業者が代行してくれる場合が多いので、まずは気軽に相談することから始めましょう。

補助金・助成金の最新トレンド

国や自治体によっては、介護保険以外にも「高齢者住宅改修助成」「バリアフリー改修補助金」など独自の支援策を設けているケースもあります。
「知らないうちに申請期限を過ぎていた…」ということもあるため、お住まいの自治体ホームページや窓口で最新情報を必ずチェックしてください。

介護リフォームでよくある失敗例と「やって良かった」実例

よくある失敗例とその対策

1. 手すりの位置や本数が足りない
「とりあえず入口に手すりをつけたが、実際は洗い場や浴槽の出入りにも必要だった」
こんな声は現場で本当によく聞きます。
ポイントは、本人と介助者の動線・動作を想定し、複数箇所に手すりを設置すること
ショールームで実際の動きを再現しながら決めると後悔がありません。

2. 浴槽のまたぎがまだ高かった/広すぎた
「新しい浴槽を入れたのに、またぎ高さが思ったより高かった」「横幅が広くて安定して座れない」
浴槽はカタログだけでなく実物に座って確認するのがベストです。
ショールーム見学をおすすめします。

3. シャワーチェアや介護グッズの置き場がない
浴室をバリアフリーにしたのに、「椅子や介護用ラックのスペースが足りず使いにくい」となることも。
シャワーチェアのサイズや動線、介助者のスペースも必ず考慮しましょう

4. ドア幅・開閉方向の見落とし
「車椅子や歩行器が通れない」「開き戸が狭くて介助者も入れない」など、ドア関連の失敗は根強い課題。
ドアの幅は65cm以上・できれば引き戸、現場で実際にシミュレーションして確認を。

5. 換気や暖房が不十分でヒートショックのリスク
浴室の断熱や暖房を後回しにし、「冬場に寒くて危ない思いをした」というケース。
浴室暖房機の設置や床・窓の断熱強化は命を守る投資と考えてください。


「やって良かった!」実際の満足エピソード

ケース1:手すり&引き戸+段差ゼロで母の自立をサポート(千葉県S様邸)
80代のお母様が足腰の手術をされたS様。浴室をユニットバスに変更し、入口段差ゼロ+3カ所の手すり設置+折れ戸から引き戸へ交換したところ、「一人でも安心してお風呂に入れるようになった」と大満足。介助するご家族の負担も大幅に軽減されました。

ケース2:浴室暖房乾燥機&断熱床で冬も安全・快適(東京都O様邸)
高齢のご主人のヒートショック対策で、断熱性の高いユニットバス+浴室暖房機を設置。冬場でも浴室の温度差が少なく、「入浴時に冷えを感じず安心」「掃除も楽で、カビ臭さも減った」と家族全員が納得の仕上がりに。

ケース3:シャワーチェア+ワイドミラーで介助もラクラク(横浜市I様邸)
介助が必要なご家族のために、洗い場を広く取り、シャワーチェアが使いやすいワイドなミラー&手すりを配置。
「洗う時の動作がラクになった」「介助の負担が減った」と、現場でもよく喜ばれるポイントです。

まとめ:介護が必要な時の“お風呂リフォーム”で家族みんなが安心できる毎日を

介護が必要になったタイミングでのお風呂リフォームは、ご本人はもちろん、介助するご家族にとっても大きな安心と安全をもたらします。
「転倒を防ぎたい」「一人で入れる時間を少しでも長くしたい」「介助の負担を減らしたい」――そんな想いを叶えるために、段差解消・手すり・引き戸・滑りにくい床・またぎやすい浴槽・断熱・暖房機能など、できる限りの対策をバランスよく組み合わせていくことが大切です。

実際の現場でも「もっと早く工事しておけば良かった」と感じる方が多く、リフォームをきっかけにご家族の会話や笑顔が増えたという声もよく届きます。
介護保険や補助金をうまく活用すれば、費用負担も大きく抑えることができますし、プランづくりや申請はプロのサポートを活用すれば難しくありません。

迷っている方は、まず「何に困っているか」「どこが危険か」「将来どうしたいか」を家族みんなで話し合い、リフォーム会社やケアマネジャーに相談してみてください。
安全であたたかいお風呂時間が、これからの日々をもっと豊かで笑顔あふれるものに変えてくれるはずです。
あなたの介護リフォームが、家族みんなの“安心の暮らし”につながりますように。

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