真冬の朝、吐く息が白くなるような寒さの中で、突然お湯が出なくなる――そんな経験はありませんか。
その原因が古いエコキュートの故障だった場合、「取り替え工事はどれくらい時間がかかるのか」「当日の流れはどんな感じなのか」が気になるはずです。
実際、私が十数年リフォームの現場を見てきた中でも、工事の所要時間を正しくイメージできているお客様は意外と少ないのです。
エコキュートの取り替え工事は、状況によって2〜7時間と幅があります。
ただし、これは単なる数字ではありません。
配管の状態や設置場所の広さ、搬入経路の障害物、さらには天候によっても変動します。
一度は午前中の予定が午後までずれ込み、お客様が夕方の入浴を諦めることになった例もあります。
そこでこのページでは、取り替え工事にかかる平均的な時間と、その日の作業工程を、現場目線でわかりやすく解説します。
事前に知っておくことで、当日慌てずに済み、スケジュールも組みやすくなります。
工事業者に依頼する前に、この記事を読んでイメージを固めておくことは、失敗を防ぐ大きな一歩になるでしょう。
エコキュート取り替えにかかる時間の目安
平均的な工事時間
エコキュートの取り替えは、順調に進めばおおよそ4〜6時間で完了します。
朝9時ごろに作業を開始し、午後3時〜4時には新しい機器でお湯が使えるようになるケースが多いです。
ただし、これは既存機器が問題なく撤去でき、配管や基礎の補修が不要な場合の話です。
一方で、私の現場経験では、10回に1回くらいは想定外の事態が発生します。
例えば、長年の使用で給水管が固着して外れにくくなっている場合や、搬入路の階段が急すぎて運搬に時間がかかる場合です。
そんな時は、工事が2〜3時間延びることも珍しくありません。
時間を短縮するための事前準備
工事をスムーズに進めるためには、前日までにいくつかの準備が有効です。
まず、屋外の作業スペース周辺を片付けておくこと。
意外にも、鉢植えや物置、物干し台が障害になって搬入に手間取るケースがあります。
また、屋内のリモコン付近やブレーカー周りも作業が入ることがあるため、軽く整理しておくと良いでしょう。
設置場所による所要時間の違い
平地で搬入がしやすい一戸建ての場合は、平均時間通りで進みやすいです。
しかし、マンションや3階建て住宅でクレーン作業が必要な場合、設置までに1時間以上追加されます。
特に都市部では道路の通行許可申請や近隣への事前連絡が必要なこともあり、これらは時間だけでなく段取りにも影響します。
当日の流れ
1. 作業開始前の確認(約30分)
工事当日の朝、まずは現地での最終確認から始まります。
撤去予定のエコキュートの状態を確認し、配管・配線ルートを再チェック。
この時点で想定外の腐食や劣化が見つかれば、追加部材の手配や補修作業が必要になるため、時間が変わることがあります。
2. 既存機器の撤去(約1〜1.5時間)
給水・給湯・ヒートポンプの配管を外し、古い本体を搬出します。
重量はタンクで約60〜80kg、ヒートポンプで30kg前後あるため、二人以上での作業が必須です。
搬出時の通路養生も行うので、実際の撤去作業よりも準備に時間がかかることもあります。
3. 新機器の搬入・据付(約1時間)
新しいエコキュートを搬入し、所定の位置に固定します。
水平器での水平確認、アンカーボルト固定、防振ゴム設置などの工程を経て、安定性と安全性を確保します。
この時、基礎の水平が狂っている場合はモルタル補修を行うため、追加で30分〜1時間かかることがあります。
4. 配管・配線接続(約1.5〜2時間)
給水・給湯・追い焚き・ヒートポンプ配管を接続し、断熱材を巻き直します。
さらに電源配線やリモコン配線を接続し、試運転に備えます。
私の経験では、この配管接続で時間を食うパターンが多く、特に冬場は配管の硬化で作業性が落ちるため、時間を多めに見積もるのが無難です。
5. 試運転・説明(約1時間)
すべての接続が終わったら、水を張って試運転を行い、正常に湯が出るかを確認します。
異音や漏水がないかもチェックし、最後にお客様へ操作方法を説明します。
この説明時間も軽視できず、質問が多ければ30分以上かかる場合もあります。
工事中によくあるトラブル例
配管やバルブの劣化による作業遅延
長年使ったエコキュートでは、給水管やバルブが固着して外れにくくなっていることがよくあります。
特に真鍮製のバルブは内部が腐食しており、力を入れすぎると折れてしまう危険があります。
私が立ち会った現場でも、撤去中にバルブが破損し、急遽ホームセンターへ部材を買いに走ったことがありました。
結果、予定より1時間半も遅れ、お客様の夕食後の入浴がギリギリになったのです。
搬入経路の予想外の障害
搬入経路は事前に下見していても、当日になって予想外の障害が出ることがあります。
例えば、庭先に置かれた新しい自転車や、隣家との境界に新設されたフェンスです。
これらは工事前日までにお客様側で移動できれば理想ですが、当日その場で対応することも少なくありません。
1つの障害物で数十分のロスになることもあるため、事前準備は工事の肝と言えます。
電気工事の追加対応
新しいエコキュートは旧型よりも消費電力や配線規格が異なる場合があります。
そのため、分電盤のブレーカー容量を上げたり、新たに配線を引き直す必要が出ることがあります。
この作業が追加になると1〜2時間延びることもあり、特に古い住宅では注意が必要です。
当日までにやっておくべき準備リスト
設置場所周辺の片付け
屋外のタンク設置場所周辺は、人が2〜3人同時に動ける程度のスペースが必要です。
物干し竿や鉢植え、ガーデン用品などは別の場所へ移動しておきましょう。
また、雨どいや排水口を塞ぐ物があると、作業時に転倒リスクも高まります。
搬入経路の確保
玄関から設置場所までの通路を広げておくことが大切です。
特に段差や階段部分は養生を行うため、物が置いてあると作業効率が落ちます。
私の経験上、幅60cmの通路があればほとんどのエコキュートは搬入できますが、障害物が多いと搬入自体が難しくなることもあります。
電気・水道の確認
工事中は一時的に電気と水道を止めるため、その時間帯を事前に家族へ共有しておきましょう。
また、分電盤や屋外水栓の位置を作業員がすぐにわかるよう案内しておくと、無駄な動きが減り、結果的に工事時間も短縮されます。
作業員の人数による時間の違い
2人作業と3人作業の差
エコキュートの取り替えは、基本的に2人作業で行われることが多いです。
2人での作業では、撤去・搬入・据付のすべてを順番に進めるため、平均4〜6時間かかります。
一方、3人体制の場合は工程を分担できるため、3〜5時間で終わることが多いです。
例えば、1人が配管撤去を進めている間に、もう1人は新しい機器の開梱・搬入準備を進められます。
私が過去に見た現場では、大雨予報が出ていたため急遽応援を呼び、3人で一気に作業したことがありました。
結果、通常5時間かかる工事が3時間半で終了し、雨が降り始める前にすべて完了。
人数の違いは、特に天候が崩れそうな日には大きな安心材料になります。
慣れているペアと初コンビの違い
同じ2人作業でも、普段から組んでいるペアと初めて組む作業員では進行速度が変わります。
普段のペアだと作業の呼吸が合っており、声をかけなくても次の工程に移れます。
逆に初コンビの場合は、工程のたびに確認や相談が必要になり、その分だけ時間が延びる傾向があります。
悪天候時の工事スケジュール
雨天時の影響
小雨程度であれば、基本的に工事は決行されます。
ただし、屋外コンセントや分電盤周りは感電防止のため養生を厚くする必要があり、その分時間がかかります。
また、足元が滑りやすくなるため、搬入や据付も慎重に行う必要があります。
私の経験では、雨天時は晴天時より30分〜1時間ほど工事時間が長くなることが多いです。
強風や雪の日
強風時は、タンクの搬入や据付が危険になるため、クレーン作業を伴う場合は延期されるケースがほとんどです。
雪の日は配管作業が特に厄介で、断熱材の巻き直し時に手がかじかみ作業効率が落ちます。
また、融雪水が配管や機器に入り込むと不具合の原因になるため、雪かきや防水対策が必須です。
こうした場合は、工事時間が2時間以上延びることも珍しくありません。
工事後すぐにお湯が使えるか
試運転後の待ち時間
新しいエコキュートを取り付けても、すぐにお湯がたっぷり使えるわけではありません。
満タンのタンクを沸き上げるには、機種や外気温によりますが約3〜6時間かかります。
冬場の外気温5℃前後では、フル沸き上げで6時間近くかかることもあります。
そのため、工事終了が夕方だった場合、当日はぬるめのお湯しか使えない可能性があります。
これを避けるため、午前中に工事を開始するか、事前に高温沸き上げ設定で試運転してもらう方法もあります。
費用と時間の関係
工事時間が長いと費用も上がる?
一般的なエコキュート取り替え工事の費用は、標準的な条件で15万〜25万円程度です(機器代込みの場合はさらに高くなります)。
この「標準的な条件」というのは、撤去・搬入がスムーズで、配管や基礎の補修が不要なケースを指します。
しかし、工事が長引くと追加費用が発生することもあります。
例えば、既存の配管の位置が合わず延長部材を追加する場合、部材代+作業時間の人件費が加算されます。
私の現場経験では、2時間延びると1万円前後の追加が発生するケースもありました。
ただし、これはあくまで時間=費用という単純計算ではなく、追加作業の内容によるため、事前に「追加作業時の料金表」を確認しておくことが重要です。
時間を短縮することで費用を抑える
事前に障害物を片付けたり、搬入経路を確保しておくことで工事時間を短縮できれば、その分追加費用のリスクも減らせます。
また、電気工事が必要な場合は、同日に対応できる業者を手配しておくと「後日工事」にならずに済み、総費用を抑えられることがあります。
工事を早く終わらせるためのコツ
1. 事前の現地調査を必ず受ける
現地調査を省略してしまうと、当日になって「配管の位置が違う」「搬入経路が確保できない」などの問題が発覚します。
これらは確実に工事時間を延ばす要因です。
業者によっては写真送付だけで見積もることもありますが、取り替え工事は現物確認が一番確実です。
2. 当日の立ち会いで判断を早くする
工事中に判断が必要な場面が出たとき、すぐに返答できれば作業が止まる時間を減らせます。
例えば「この配管は延長しますか、それとも交換しますか?」といった質問にすぐ答えられれば、職人がその場で作業を続行できます。
私の感覚では、判断の待ち時間が合計30分以上になる現場も珍しくありません。
3. 機器の納品と工事日を確定させておく
繁忙期(特に12〜2月)は、機器が入荷しても工事日が数週間先になることがあります。
この間に気温が下がると、凍結で既存機器が完全に使えなくなる恐れがあります。
スムーズに交換するためには、納品日と工事日を同時に押さえてしまうのが理想です。
工事後のフォロー時間も考慮する
アフター説明と引き渡し
工事が終わったら、使い方やメンテナンス方法の説明があります。
これは平均20〜30分ですが、お客様が初めてエコキュートを使う場合は1時間近くかかることもあります。
特にリモコン操作や節電設定は細かい部分が多く、説明を端折ると後日「使い方がわからない」という問い合わせが増えます。
試運転後の最終チェック
お湯の温度・圧力・漏れの有無を確認し、配管周りの断熱材の状態を再確認します。
この最終チェックは短時間ですが、確実に行うことで長期的なトラブルを防げます。
私の経験では、この最終チェックをしっかりやっている業者ほど、設置後数年間は修理依頼がほとんど入りません。
まとめ
エコキュートの取り替え工事は、一般的な条件であれば半日程度、つまり4〜6時間で完了します。
しかし、搬入経路の障害物や配管・基礎の補修、電気工事の追加が必要になると、プラス2〜3時間かかることも珍しくありません。
そのため、当日はスケジュールに余裕を持ち、夕方から予定を入れないようにしておくのが賢明です。
また、工事後すぐに高温のお湯が使えるわけではないことも覚えておきたいポイントです。
冬場は沸き上げに最大6時間ほどかかるため、夕方に工事が終わった場合は、当日の入浴時間を調整するか、事前に応急的なお湯の確保を考えておきましょう。
工事をスムーズに進めるためには、設置場所や搬入経路の事前整理、現地調査の確実な実施、当日の迅速な判断が重要です。
これらを押さえておけば、時間のロスも費用の追加も最小限に抑えられます。
エコキュートは10年〜15年と長く使う設備です。
だからこそ、取り替えの一日を慌ただしく過ごすのではなく、計画的に準備して「安全・確実・快適」に迎えたいものです。
次の冬を安心して迎えるためにも、今日から少しずつ準備を始めてみませんか。